2012年7月28日土曜日

ロンドン五輪開会式に見えた ” 苦悩するイギリス ”

ロンドン五輪、ボート上のベッカムはカッチョ良かったね★
▲英国女王とベッカムがくぐったロンドン橋
昨晩のオープンカレッジは、残念ながらニコニコさんの不具合でお休みすることになってしまいました。コミュメンバーさん、ごめんなさい!
結局、悶々として眠れなくて、そのままロンドンオリンピック開会式の中継をリアルタイムで視聴することになったわけです。ところが・・、どうも何かがしっくりこない。胸にまとわりつくような、言うに言えない不思議なモヤモヤ・・。

「この気分、何だろな?」

バルセロナ ・ アトランタ ・ シドニー ・ アテネ ・ 北京と、過去5回の五輪開会式では、感じることのなかったこの “妙な” 感覚を確かめたくて、生放送が終わると同時に録画映像を再生してみて、そして、いくつかの点に気がついた。このささやかな気づきを、オープン・カレッジ参加メンバーさんのために書きだしてみる次第ですが、まとまりのない書きなぐりの文章なので、「なるほど。そんな見方もあるのね。」 程度に、かる~く読んで頂ければ幸いです。

1.“葛藤の起源” がフラッシュバックするイントロダクション

緑の牧草地に、突如煙突群が突き出した・・。オープニング早々の度肝をぬいたこのアトラクションでは、産業革命とともに激変したイギリスの景観を表しているらしい。収穫を祝う農夫たちに代わって登場するおびただしい工場労働者や炭鉱夫たちは、働く民衆の環境変化をうまく表している。
今回の開会式のテーマは 『驚きの島々』 だと聞いていたので、僕はてっきり、オープニングで描くべきシチュエーションなら他にもありそうに思っていたのだが。ここから疑問がはじまったわけ。
でも、このことは 1952年に設立された“欧州石炭鉄鋼共同体”を起源とする “EU(欧州連合)” を思い返すことで合点がいった。・・そっか、そういうことか。

たぶん、この開会式のメッセージ、本当はヨーロッパ諸国に向けられたものだ。そのテーマは、『 英国の理想の元、ともに団結せよ 』。・・以下、この視点をもとに書く。


2.強き英国の象徴 “ウィンストン・チャーチル” の微笑み

場面は替わって、ジェームス・ボンドに迎えられるエリザベス女王のシーン。振り返った女王陛下とボンドの2人を乗せたヘリコプターは、ロンドン市街を見下ろしながら開会式が始まったばかりの競技場に向かう。なかなか小気味よい演出だな。・・と、

その途中、ヘリに向かって(実は “観客” と “テレビ視聴者” に向けて)手を振る銅像がある。ご丁寧に、カメラは台座のアップまで映しだして銅像の主の名を明かした。“ Winston Churchill ” ・・戦時下の英国首相、ウィンストン・チャーチルその人だ。
彼さえいなければ、EUの誕生は30年は早かっただろうと言う人がいるほど、西ヨーロッパ諸国からの評判が悪いチャーチル。(「イギリス植民地帝国の墓堀デブ」とのあだ名が残っているほど)・・そのチャーチルが、満面の笑みでテレビの向こうから手を振るのだ。まるで 「どうだい?みんなハッピーかい?」とでも言わんばかりに。
ロンドンにはチャーチル以外の銅像が他にもあるだろうに・・なぜ、チャーチル?


3.グローバル化の波に飲み込まれる “現代英国文化”

開会宣言が終わると、アトラクションが描き出す舞台は現代に移った。
そこでは “ロック” や “ラップ” のBGMを背景に、イギリス一般庶民の日常がミュージカル風に描かれる。・・が、もはや、そこに “ 風景 ” はない。
このことを象徴するように、ステージ中央に設置された(庶民の)家は、断片的なイメージショットの次々を映し出す “ スクリーン ” と化している

この現代的なショットの積み重ねからは、明らかに “インターネットの影響” を感じないわけにはいかないが、ここで唐突に バーナーズ=リーが紹介される。・・リーは、事実上のインターネットの父。今や世界中で活用されている HTMLやURL などを開発した彼が、英国人だったとは知らなかった。( バーナーズ=リーの略歴や業績はこちら。 ※PDFファイルで開きます )

4.英国の煩悶が随所に見られた開会式。

他にも、気になったシチュエーションはいくつも見受けられたが、煩雑になるのでここでは省略したい。興味をもった方は こちらのページや、これから続々とアップされるだろう動画を見て各自ご判断頂きたい。

最後に、ポール・マッカートニーが歌う “ヘイ・ジュード” で開会式は締めくくられたが、2012年ロンドン五輪開会式のメッセージは、この歌により明瞭となった。


「あしTAKUさん、ちょっと強引な意見なんじゃないですかね?」って声が聞こえてきそう。

だけど、本開会式の芸術監督を務めたダニー・ボイルは、まぎれもない “モンタージュ技法” の名手で、あの映画 『 スラムドッグ$ミリオネア 』 で見せた “ 最後まで真意を語らない ” という手法は、まさに彼の十八番であることをお忘れなく。
・・何はともあれ、こういった見方をすることで娯楽は楽しむだけのものでなくなり、自分の頭で考える訓練としても立派に役立つわけでありまする。

それにしても、貴賓席に坐す方々は、この開会式を決して楽しんでばかりはいらっしゃらなかったのかもしれませんね。選手入場の際、先頭をいくギリシャ選手団を見つめる冷ややかな眼差しが忘れられません。


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