2012年8月12日日曜日

『お盆』 に寄せて

大輪のひまわりも、お盆になるとご先祖様を迎えているかのようです。
お盆は、由緒正しい “日本古来の文化” である。・・というお話です。

お盆のルーツについては、『 仏説盂蘭盆経(ぶっせつうらぼんきょう)』 という大乗仏典がもとになって日本に広まったという説が一般的ですね。
ところが、多くの研究者が認めているように、そもそものお釈迦さまの教えには人間死後の説明(?)もなく、極めて日本的な行事。それもそのはず、仏教が僕らの国に定着していく過程で、それまで一般的だった “先祖供養の習慣” を取り込んで、仏教ふうに様式化したものが現在のお盆なんですから。いわば、外見は仏教っぽくても、やってることはすべて “純粋な日本の祭り” なんですな。

このお盆の習俗を “古神道(こしんとう)の先祖供養儀式” と表現する方もいらっしゃるようですが、この “古神道” の定義が不明なわけで。・・そうなると、ヘタをすると “古神道という宗教がルーツ” みたいに考える人も出てきて、おもしろくないことになりそうなので、とりあえず “純粋な日本古来のお祭り” としておきましょう。

理屈っぽい方は 「“純粋な” という部分が気にいらない。そもそも日本民族など幻想であって、縄文期に渡来した多民族が・・」 などと疑問をお持ちになることでしょうが、そういう方は、また機会をあらためてお話するときを待って頂くか、“ニコ生・オープンカレッジ” をご視聴いただくか、もしくは、どうぞこのままそっとページを閉じてくださいますようお願い致します。

日本人は “哲学しないという哲学” に 『美』 を見てきました。ひょっとすると “美意識を伴わない純粋哲学” というものを理解できかなかったのかも知れません。ま、それはともかくとしてお釈迦さまの説いた仏教は、どう学んでみても “哲学” に違いありません。なので、僕の感覚では、仏教を “宗教” とは呼びたくはありませんね。本音を言えば。
中学の頃から 『スッタニパータ』『阿含経』 などを中村元先生の著作を頼りに読みふけってみたり、大乗仏典の形成に思いを寄せながら日本文化とは何かを求めて全国を彷徨してみたり・・ まぁ、あれこれやってきた上での意見ということで。

おそらく、お釈迦さん自身の言葉ではないか?と考えられているパーリ語の仏典をながめてみても、弟子の質問に答えて、お釈迦さん自身が 「死後の世界?私は死んだことがないんだから、死後の世界なんて知るはずないではないか。」 と答えたらしいので。それ以降のお弟子さんが、死後の世界を語られるのは・・ ちょっといかがなものかと。そう思ったりもするわけです。

お釈迦さんは 「自分が死んでも葬式はするな。そんな時間があったら修行をしなさい。」 と言い残していますし、また 「死者の霊を弔(とむら)ったり、慰霊供養はもってのほかである。仏者(仏教信者)は生きているうちに受戒(じゅかい)し、悟(さと)りを得ているのだから、死後に迷って浮かばれないなどということがあるか。死者への慰霊供養など無用のことである。」とまで語っていますから。 お盆に “ご先祖さま” をお迎えするなんて、お釈迦さまの弟子にとっては言語道断ではないのでしょうかね?

本来の仏教は、そもそもが厳しい “戒律宗教” であり、比丘(びく、男性の弟子)には200の戒律があり、比丘尼(びくに、女性の弟子)には389の戒律、合計589戒という “掟” を守りながら修行することが要求されました。・・もう、めちゃ大変。これがいわゆる “小乗仏教” ですね。
僕の家の宗派は “浄土真宗”。 ・・まぁ、大乗仏教といえば言えるのでしょうが、この大乗仏教になると、お釈迦さまが亡くなられてからずいぶん時間がたって、仏教の命であったはずの “戒律” が柔らかくされたもの。それが、いわゆる大乗仏教。(そこから、大乗非仏説という意見も出てくる)

さらに日本のそれは、伝教大師(最澄)によって50にも満たない戒律に削り取られ、しかも “自戒律” という独特のものになってしまいましたから、妻帯・肉食・世襲というのが当然のような “今の日本仏教” は、お釈迦さんの説いた仏教とは似ても似つかないもの になっている次第。

とまぁ、そういうわけで。考えれば考えるほど、知れば知る知るほど・・ “葬式” と “死者回向(えこう)” が、お坊さんの仕事とはこれ如何に? 話は 江戸期の “寺社奉行” と “檀家制度のルーツ” について語らねばならなくなりますが、それはまたの機会にでも。

ずいぶん話が脱線してしまいました。 こりゃ失礼。何はともあれ、ご先祖さまをお迎えして “おもてなしの心” で飲食を共にする行為。これは 仏教などの宗教行事といった類のものではなくて、世界に誇るべき “日本人の美徳” と信じる次第なのでありまする・・

「 ご先祖さま、ありがとうございます。 合掌 」


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2 件のコメント:

  1. 「お盆」は仏教に取り組められながらも、先祖供養としての原型をとどめているのはありがたいことです。

    今のお盆は父方のご先祖を供養します。
    これは仏教渡来以前の先祖供養もこのように行われていたのでしょうか?

    以前、右脳はイザナギ。左脳はイザナミ。との教えを頂戴したことがありました。
    これは魂魄と何か関係あるのでしょうか?

      合掌

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    1. >福ぞうさん

      有意義なコメントありがとうございます。

      ご質問にはBBSの方に“スレッド”を立ててご回答させて頂きますので
      引き続きよろしくお願いします m(_ _)m

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